2024年度の「守屋賞」をあめあがりの会代表 春野すみれが受賞

守屋賞は、長年刑事裁判や少年審判に携わってきた元裁判官の守屋克彦氏が資金を提供して創設したNPO法人「刑事司法及び少年司法に関する教育・学術研究推進センター」(略称「刑事・少年司法研究センター」〈ERCJ〉)が、刑事司法、少年司法の実務と理論の発展のために設けた賞です。

その2024年の受賞者のひとりとして、「非行」と向き合う親たちの会(あめあがりの会)代表である春野すみれが受賞いたしました。

これもひとえに、あめあがりの会を支えてくださった方々のお力です。あらためて御礼申し上げます。

2024年度 第12回守屋賞 受賞者

袴田巌氏、袴田ひで子氏

受賞理由: 事件発生58年後の2024年10月、袴田巌氏の再審無罪判決が確定したが、その間、想像を絶する重圧の下、巌氏は一貫して無罪を訴えられ、姉のひで子氏は無実を信じてひたすら伴走を続けてこられた。お二人の姿勢は深甚の敬意に値するものであり、同じような立場に置かれた人たちへ大いなる励みになるものである。

春野すみれ氏(「非行」と向き合う親たちの会〔あめあがりの会〕代表)

受賞理由: 非行や問題を抱えた子どもに悩み、戸惑う親たちが、互いにその悩みや思いを話すための「場」をつくり、現在そのような「場」は全国各地に拡がり、親たちの道標にもなっている。悩み苦しむ親たちの気持ちを受け止め、対話によって子どもや家族と向き合う力を生み出すための長きにわたる地道な活動は称賛に価する。

木寺一孝氏(映画監督、TVディレクター)

受賞対象業績: 『正義の行方』(2024年公開)
受賞理由: 「飯塚事件」に関わった捜査官、弁護人、法医学者、被告人の親族、目撃証人、記者へのインタビューを丹念に映像化し、特に、地元の西日本新聞社の編集委員が中心となって行った事件を検証する調査報道に基づく記者の話は、表題通り「正義の行方」なるものを考えさせる。刑事裁判に携わる者、事件報道に関わる者それぞれの姿勢を問う内容は貴重な成果である。

春野すみれ 受賞スピーチ

ご紹介いただきました、春野すみれです。
このようなすばらしい賞をいただき、大変光栄です。
また、私たちのような地味な活動に、注目してくださり、感謝いたします。
とりわけ、私を推薦してくださった先生方には、長期間あたたかく見守っていてくださったことに、心からお礼申し上げます。

今日は、初めましての方が多いと思いますので、改めて、私の活動について少しお話しさせていただきます。

30年ほど前のこと。
私のかわいい長女が、中学生になって急に大きな揺れ、そして荒れを見せました。まさかの不良少女に?、と、慌てました。
家庭裁判所にも2度呼ばれ、辛くて悲しくて、恥ずかしい思いでいっぱいの日々でした。
そんなこんなで右往左往していると、気がついたら下の子が、こちらは不登校という形の揺れ方で、意思表示をしました。夫も困り果てているのが分かりました。
私は、嵐のなかに放り込まれた気分でした。どうしたらいいかわからず、同じ思いの人と話がしたい、ほかの人はどうやって生きているのか知りたいと思いました。
いろいろ調べたのですが、国内にも、海外にさえも、そういう場所はないようで、結局、手探り状態で、親が集う場を呼び掛け、理解ある方々の協力で、小さな会が生まれました。
いつか嵐もやむ、雨も上がる、そう信じて、非行と向き合う親たちの会=通称を「あめあがりの会」と名付けました。

まだ渦中だった私は、世間から、非行少年を育てた親たちが会を作ってどうするのだと、バッシングを受けるのではないか、と怯えながらだったことを思い出します。
でも、マスコミの方々も、好意的に取り上げてくださいました。

会ができて、掲載された新聞記事を手に、遠方から、新幹線や飛行機に乗って、子どものことに悩んで、眠れない、食事も喉を通らない、という親たちがやってきて、泣きながら悩みを語り、最後は少し笑顔になって帰る姿は、私の想像を超えた事でした。
会を作ってよかったんだ、と思いました。
でも、だからといって子どもがすぐに変わるわけでもなく、個別の対応が必要になることも多く、あめあがりの会設立の6年後に、みんなで「NPO法人非行克服支援センター」を作りました。
ここには専門家や支援者の方々も多数、参加してくださり、あめあがりの会の親たちにとって、心強い存在になっています。
また、先ほど言いましたように、全国各地から東京に来られた人たちがいたわけですが、その人たちは、自分の気持ちが落ち着いてくると、地元に会がほしいということになり、各地に会が作られていきました。
そこで、10年後の2006年に、「非行」と向き合う全国ネットという、ゆるやかな連絡会を作って、「非行」「子どもの問題」を考える全国交流集会を開催したり、各地の情報を交換したりしています。
いま、この全国ネットには、北海道から沖縄までの30団体ほどが参加しています。
私は、新宿にある事務所で、相談を受けたり雑用に追われたりの毎日。相談される方は、皆、少し前の私自身で、電話の向こうで一人頑張っているその人を、抱きしめたくなります。

今、少年事件の数は、設立当初から見ると、激減していますが、今も、辛さを抱えた人たちが次々に会にやってきます。語り合う中で、子どもと向き合う力を手にして、落ち着きを取り戻して、すこし笑顔になって帰る姿は、設立当初と変わりません。
子どもたちは、支えがあれば立ち直ります。親も同じです。親が元気になれば、子どもの立ち直りを後押しする力強い存在になるのです。

悩んでいると、背中を丸めて下ばかり向いてしまいます。その日の地面の様子はわかるけれど、空がどうだったか分からないという人が多いのです。そんな状態では、力が出ませんので、みなさんが笑顔になれるような、楽しい企画も行っています。
そのひとつは、「あめあがり合唱団」が会の中に結成されまして、少々長い歌を、2曲だけ、20年間歌い続けています。毎回泣きながら歌うので、うまくならないのですが、背筋を伸ばして声を出す、笑える、これがすごくいいんです。
さらには、「劇団あめあがり」もあり、1時間ほどのオリジナルお芝居をやっています。コロナ禍で中断してしまいましたが、コロナ前は、10回以上、舞台をこなしています。プロの演出家の協力があり、見ごたえはあります。
呼んでいただけましたらすごく嬉しいです。
また、『あめあがり通信』という通信を、毎月出しているのですが、そこには、「あめあがり川柳」の欄があります。
いくつかご紹介しますと、
「いつの日か 思い出になる? 壁の穴」
「三角の 目にひるみつつ 立ち向かう」
「やれやれと 思う間もなく 退学し」
「パトカーの 音がするたび 飛び起きて」などの、非行アルアルや

「親なんて 割に合わない やめたいよ」とか
「雨あがる その日をひたすら 願い 待つ」
「変わるのは我なり 常に 胸に置き」
と言ったものもあり、「うまい!」と褒め合ったり、笑ったりしています。
いちど、集会の時に、川柳大会をやりまして、そのときの第1位は
「いてほしい いないでほしい バカ息子」でした。

今日は、58年もの間、冤罪と闘い続けてこられた袴田巌さん、秀子さんと共に賞をいただいたこと、言葉にならないほどの感動です。
昨年、あめあがりの会で冤罪被害者の布川事件の桜井昌司さんをお呼びしました。癌のからだで来てくださり、我が子の非行で悩んでいる親たちを前に、お話ししてくれて、その数か月後に、お亡くなりになりました。
話の中で、桜井さんは、何度も「子どもがほしかったなあ」とつぶやきました。そして、最後に、非行の親たちにこう言ったのです。
「私は、親になれなかった。だから子どもの非行で悩めるなんてうらやましい。だって、子どもがいて、生きているんだもん」
さらに、「非行の子は、世の中の問題に『NO!』を突きつけているのだから、我が子を誇りに思いなさいよ」と。
率直な、暖かい、力強い励ましの言葉でした。痛みを抱えながらも、悩んでいる親たちにこのことを伝えに来てくれたのだと思いました。
世の中はますますどんな失敗も許さない、管理的な自己責任社会になり、さらには、誹謗や中傷があふれ、生きにくさは増しているようにも思います。
今日は、この場に立たせていただき、少年司法・刑事司法の分野で活動されている多くの方々に支えられていること、そして、「私たち親も、孤立していない」ことを、ひしひしと感じています。
また、この場をお借りして、私の娘たちと、一緒に活動しているたくさんの仲間たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います。
この賞に恥じないように、今後も、これまで通り、仲間と一緒に地道に、前に進んでいきたいと思います。
本日は、本当に、ありがとうございました。


https://www.ercj.org/index.html